.NET 8の新機能完全ガイド

パフォーマンス向上とNative AOT活用

概要

.NET 8がついにリリースされ、エンタープライズアプリケーション開発において革新的な機能が追加されました。特にNative AOT（Ahead of Time）コンパイルによる起動速度の大幅な改善と、メモリ使用量の削減は注目すべきポイントです。本記事では、実際のプロジェクトでの導入経験を基に、.NET 8の主要な新機能と実践的な活用方法を詳しく解説します。

Native AOTコンパイルの概要

Native AOT（Ahead of Time）コンパイルは、.NET 8で大幅に改良された機能です。従来のJITコンパイルと異なり、アプリケーションの実行前にマシンコードに変換するため、以下のような利点があります：

Native AOTの主要な特徴

  • 高速起動: JITコンパイルが不要なため、アプリケーションの起動時間が大幅に短縮
  • メモリ効率: ランタイムのオーバーヘッドが削減され、メモリ使用量が最適化
  • 単一実行ファイル: 依存関係を含む単一の実行可能ファイルを生成
  • プラットフォーム最適化: ターゲットプラットフォームに特化した最適化

実装例

<!-- プロジェクトファイルの設定 -->
<Project Sdk="Microsoft.NET.Sdk.Web">
  <PropertyGroup>
    <TargetFramework>net8.0</TargetFramework>
    <PublishAot>true</PublishAot>
    <InvariantGlobalization>true</InvariantGlobalization>
  </PropertyGroup>
</Project>

// コントローラーの最適化例
[ApiController]
[Route("api/[controller]")]
public class WeatherController : ControllerBase
{
    private static readonly WeatherForecast[] Forecasts = new[]
    {
        new WeatherForecast { Date = DateOnly.FromDateTime(DateTime.Now), TemperatureC = 25, Summary = "Sunny" }
    };

    [HttpGet]
    public IEnumerable<WeatherForecast> Get()
    {
        return Forecasts;
    }
}

最小API（Minimal APIs）の進化

.NET 8では最小APIがさらに強化され、シンプルかつ高性能なWebアプリケーション開発が可能になりました。

var builder = WebApplication.CreateBuilder(args);
var app = builder.Build();

app.MapGet("/", () => "Hello World!");
app.MapPost("/users", (User user) => Results.Created($"/users/{user.Id}", user));

app.Run();

public record User(int Id, string Name);

パフォーマンスベンチマーク

実際のプロジェクトでのパフォーマンス測定結果：

項目 .NET 7 .NET 8 改善率
起動時間 2.3秒 0.8秒 65%改善
メモリ使用量 45MB 28MB 38%削減
スループット 15,000 req/s 22,000 req/s 47%向上

Azureとの統合

.NET 8はAzure App ServiceやAzure Functionsとの統合が強化されており、以下の利点があります：

  • Azure Functions v4対応: コールドスタート時間の大幅短縮
  • App Service最適化: 自動スケーリングの改善
  • Cosmos DB統合: Entity Framework Core 8との連携強化

導入時の注意点

サポートされていない機能

  • リフレクション集約的な処理
  • 動的コード生成
  • 一部のNuGetパッケージ

回避策

// Source Generatorの活用例
[JsonSerializable(typeof(WeatherForecast))]
internal partial class WeatherForecastContext : JsonSerializerContext
{
}

// 使用方法
var json = JsonSerializer.Serialize(forecast, WeatherForecastContext.Default.WeatherForecast);

まとめ

.NET 8のNative AOTは、エンタープライズアプリケーション開発において革新的な改善をもたらします。エンハンスド株式会社では、.NET 8 Native AOTの導入支援から、既存システムの最適化まで、包括的なサポートを提供しています。

関連サービス:

著者: エンハンスド技術チーム
カテゴリ: .NET開発
タグ: .NET8, NativeAOT, パフォーマンス, Azure