DifyでRAGを実装する実践ガイド
Difyで作る最強の社内AI:「知識の宝庫」を解き放つRAGシステム構築記
はじめに:「社内情報が多すぎて探せない」地獄からの脱出
「あの資料どこだっけ...」 「このプロジェクトの経緯、誰か知ってる?」 「新人に説明するの、また一から...?」
社内Slackで毎日飛び交うこんな質問。私たちのチームも同じ悩みを抱えていました。
ドキュメントは山ほどあるのに、必要な情報にたどり着けない。まるで宝の山に埋もれて、宝物が見つからない状態でした。
そんな時に出会ったのがDifyとRAG(Retrieval-Augmented Generation)。これが私たちの働き方を劇的に変えてくれました。今では「AIさん、〇〇について教えて」と聞くだけで、社内の膨大な知識から最適な答えが返ってきます。
今回は、この「魔法のような」システムをどうやって作ったか、失敗も含めて正直にお話しします。
RAGって何?「ChatGPTに社内情報を教える」魔法
分かりやすく言うと...
想像してください。新入社員(ChatGPT)がいて、すごく頭は良いけど、あなたの会社のことは何も知らない。
そこで、社内の資料室(ナレッジベース)を用意して、質問されたら関連資料を渡してから答えてもらう。これがRAGです!
通常のChatGPT: 「御社の製品仕様を教えて」→「一般的な製品仕様は...」(的外れ)
RAG搭載ChatGPT: 「御社の製品仕様を教えて」→(社内資料を確認)→「弊社のProduct Aは...」(完璧!)
導入してわかった本当のメリット
-
新人教育が激変
- Before:先輩が3日かけて説明
- After:AIに聞けば5分で理解
-
ドキュメント探しがゼロに
- Before:「あの資料どこ...」30分探す
- After:「〇〇について教えて」即回答
-
情報の一貫性
- みんなが同じ情報源から回答
- 「人によって言うことが違う」問題を解決
-
コスパ最強
- ChatGPTを1から教育?→数億円
- RAGで既存資料を活用→ほぼ無料
Difyとの出会い:「これ、プログラミングできない人でも使える!」
最初の衝撃
正直に言います。最初は「また新しいツールか...」と思ってました。
でも、デモを見て衝撃を受けました。ドラッグ&ドロップでAIアプリが作れる。まるでレゴブロックを組み立てるような感覚!
Difyのすごいところ:
- ノーコードでAI構築:エンジニアじゃなくても作れる
- 見た目で分かる:フローチャートみたいに処理が見える
- すぐ試せる:作ったらその場でテスト可能
- 何でも繋がる:ChatGPT、Claude、社内システム...全部OK
他のツールと比べてみた結果
最初はLangChainでゴリゴリ実装してました。3週間かけて作ったものが、Difyなら3時間で完成...正直、悔しかったです(笑)
開発スピードの違い:
- LangChain:コード500行、開発3週間
- Dify:ビジュアル設定のみ、開発3時間
結果は同じ。いや、Difyの方が管理しやすい!
環境構築:意外と簡単だった30分セットアップ
「インフラ苦手...」な私でもできた!
環境構築と聞いて逃げたくなる気持ち、分かります。私もそうでした。 でも、Difyは本当に簡単。コーヒー飲みながら30分で完了しました。
必要なもの:
- Dockerが動くPC(Mac、Windows、LinuxどれでもOK)
- 30分の時間
- コーヒー(重要!)
実際の手順(つまずきポイント付き)
# 1. まずはクローン(これは誰でもできる)
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify
# 2. 設定ファイルをコピー
cp .env.example .env
# 3. 秘密の設定を編集(ここ重要!)
nano .env # Macならvimでも可
つまずきポイント1:.envの設定
# これだけは必ず変更!
SECRET_KEY=your-super-secret-key-12345 # 適当な長い文字列に
INIT_PASSWORD=Admin123! # 管理者パスワード(忘れないで!)
最初、デフォルトのままにしてたらセキュリティ警告が...ちゃんと変更しましょう。
# 4. いよいよ起動!
docker-compose up -d
# 5. 起動確認(ドキドキの瞬間)
docker ps
つまずきポイント2:ポートが使用中
「あれ?エラーが出る...」
他のサービスが80番ポートを使ってることがあります。 .envでポート変更すればOK:
DIFY_PORT=3000 # 好きなポート番号に
初回ログイン:感動の瞬間
ブラウザで http://localhost
を開いて...
「おお、動いた!」
管理画面が日本語で表示された時の感動は忘れられません。
ナレッジベース構築:社内の「知識の宝庫」を作る
まず何から始めたか
「さあ、AIに学習させるぞ!」と意気込んだものの...
社内資料を見渡すと:
- Word文書が500個
- PDF資料が300個
- Confluenceページが200個
- マニュアルのExcelが50個(なぜExcel...)
「これ、全部手作業で登録するの...?」
絶望しかけましたが、大丈夫でした。
データ準備の現実的なアプローチ
ステップ1:まずは重要な資料から
全部一気には無理。だから優先順位をつけました:
- よく聞かれる質問のFAQ(これだけで効果大)
- 製品マニュアル(問い合わせ削減)
- 社内規定(みんなが確認したがる)
- プロジェクト議事録(後から追加)
ステップ2:フォーマット統一は諦めた
最初は「全部Markdownに統一しよう!」と頑張ってましたが... 3日で挫折。DifyはPDFもWordもそのまま食べてくれることに気づき、方針転換。
# 実際に使った簡易スクリプト
import os
from pathlib import Path
# とりあえず全ファイルをリストアップ
docs_path = Path("./社内資料")
file_list = []
for file in docs_path.rglob("*"):
if file.suffix in [".pdf", ".docx", ".md", ".txt"]:
file_list.append({
"path": str(file),
"type": file.suffix,
"size": file.stat().st_size / 1024 / 1024 # MB
})
print(f"見つかったファイル: {len(file_list)}個")
print(f"合計サイズ: {sum(f['size'] for f in file_list):.1f}MB")
つまずきポイント:巨大PDFに注意!
200MBのPDF(画像だらけの資料)をアップロードしたら、処理が終わらない... 結局、50MB以上のファイルは分割することにしました。
Difyでのアップロード:ドラッグ&ドロップの衝撃
コードを書いてベクター化して...と思ってたら、Difyの管理画面に「ナレッジベース」というボタンが。
「えっ、ファイルをドラッグ&ドロップするだけ?」
本当にそれだけでした。
Difyのナレッジベース機能:
- ファイルをドラッグ&ドロップ
- 自動でチャンク分割
- 自動でベクター化
- 完了!
「3日かかると思ってた作業が30分で終わった...」
設定でつまずいたポイント:
- チャンクサイズ:デフォルトの800文字がちょうどよかった
- 重複部分:20%くらいがベスト(試行錯誤の結果)
- メタデータ:ファイル名を自動で付けてくれるのが便利
Difyワークフロー構築:「レゴブロック」でAIを組み立てる
管理画面を開いて衝撃を受けた
ログインしたら、目の前にビジュアルエディタが。
「これ、プログラミングじゃないよね?」
ブロックをドラッグして、線で繋いで、設定を入力するだけ。まるでScratchでプログラミングしてるみたい!
実際に作ったワークフロー
ステップ1:新規アプリ作成
- 「新規アプリ」ボタンをクリック
- 名前:「社内AIアシスタント」
- タイプ:「チャットボット」を選択
- アイコン:🤖(こういうところが楽しい)
ステップ2:ブロックを配置
左側のパレットからブロックをドラッグ:
- 「開始」ブロック(ユーザー入力を受け取る)
- 「ナレッジ検索」ブロック(これがキモ!)
- 「LLM」ブロック(回答生成)
- 「終了」ブロック(結果を返す)
つまずきポイント:ブロックの接続
最初、線で繋ぐのに慣れなくて...
- 出力ポートから入力ポートへドラッグ
- 間違えたら線を右クリックで削除
- 何度でもやり直せるから安心
プロンプト設定:「AIの性格」を決める
プロンプトは超重要!ここでAIの「性格」が決まります。
最初の失敗:
「質問に答えてください」
これだけだと、適当な答えが返ってきました...
改善後のプロンプト:
あなたは[会社名]のベテラン社員です。
新入社員や同僚からの質問に、以下のルールで答えてください:
1. 提供された資料の情報のみ使用(勝手に作らない)
2. 分からないことは「資料に記載がありません」と正直に
3. 専門用語はかみ砕いて説明
4. 「です・ます」調で丁寧に
5. 参照した資料名を必ず明記
これで「優しい先輩」のAIが完成!
つまずきポイント:文字数制限
「簡潔に答えて」と書いたら、簡潔すぎて情報不足に... 「200文字以内でまとめ、その後詳細を説明」のように具体的に指示するとうまくいきました。
実際に使ってみた結果:「すごい」の一言
初日の衝撃
「先月のプロジェクトXの仕様ってどうなってたっけ?」
以前なら:
- Slackでプロジェクトチャンネルを探す(10分)
- 過去ログをさかのぼる(20分)
- 担当者に確認(返事待ち1時間)
今:
- AIに聞く(1分)
- 完璧な回答が返ってくる
実際の回答例:
プロジェクトXの仕様についてお答えします。
📍 概要:
ECサイトのリニューアルプロジェクト
📅 スケジュール:
- 開始:2024年3月
- リリース予定:2024年6月
📋 主要機能:
1. レスポンシブデザイン対応
2. 決済システムの刷新
3. 在庫管理APIの統合
📄 参照資料:
- プロジェクトX_要件定義書_v2.3.pdf
- 2024年3月定例会議事録.docx
ちゃんと参照元まで教えてくれる!
予想外の効果:チームの変化
1. 情報共有が活発に 「誰かに聞く」ハードルが下がって、知識のドキュメント化が進みました。
2. 新人が即戦力に 入社1週間の新人が、ベテランと同じ情報にアクセスできる!
3. 「知らない」を言いやすくなった 「AIで調べたらこうでした」と言えるように。
運用してみて分かったこと
「作って終わり」じゃダメだった
リリースして喜々...と思ってた2週間後。
「あれ?AIの回答が変だぞ?」
原因を調べると:
- 古い資料が混ざってた
- 矛盾する情報があった
- 更新された資料が反映されてない
そう、メンテナンスが必要だったんです。
定期メンテナンスのルーティン
毎週金曜日の午後:
- 今週追加された資料を確認
- 古い資料をアーカイブ
- ユーザーフィードバックを確認
- プロンプトの微調整
これをルーティン化したら、精度が格段に向上!
ユーザーフィードバックが宝の山
実際にもらったフィードバック:
- 「回答が長すぎる」→ 要約を先に表示
- 「専門用語が多い」→ 用語集を作成
- 「関係ない情報が出る」→ 検索精度を調整
これらの声を反映したら、満足度が70%から95%に!
コストも考えなきゃ...
月間コスト(概算):
- Difyホスティング:約1万円
- ChatGPT API:約2万円(使用量次第)
- メンテナンス工数:週約2時間
効果:
- 問い合わせ対応時間:-80%
- ドキュメント探し時間:-90%
- 新人教育時間:-60%
ROIで考えると、余裕でペイしてます!
セキュリティ:「社内情報が漏れたら...」の恐怖
最初は甘く見てた
「社内のシステムだから安全でしょ」
...と思ってたら、セキュリティチームから指摘が。
「もしこのAIが外部からアクセスされたら?」 「誰が何を聞いたか記録してる?」 「機密情報が含まれてない?」
そういえば何も考えてなかった...
実装したセキュリティ対策
1. アクセス制限
- 社内ネットワークからのみアクセス可
- Azure ADで認証(シングルサインオン)
- 部署ごとにアクセスできる資料を制限
2. 監査ログ
- 誰がいつ何を質問したか全て記録
- 怒られちゃうかな...と思ったけど、意外と好評
- 「誰がよく使ってるか分かって良い」とのこと
3. データのフィルタリング
- 個人情報を含む資料は除外
- 機密度「高」の資料は管理者のみ
- 契約書などはマスキング処理
つまずきポイント: 最初、セキュリティを厳しくしすぎて使いにくいシステムに... バランスが大事ですね。
トラブルシューティング:「やらかした」集
失敗1:「全然関係ない答えが返ってくる」
「社員旅行はいつ?」→「弊社の旅行代理店サービスは...」
ちがう、そうじゃない!
原因:「旅行」というキーワードだけで検索してた
解決:
- 検索キーワードを増やす(類義語辞書を作成)
- コンテキストを考慮した検索に変更
- よくある質問はFAQとして別管理
失敗2:「遅すぎて使えない」
最初の頃、返答まで10秒以上...
「これなら自分で探した方が早い」と言われちゃいました。
原因:
- 全文検索してた(ベクター検索未使用)
- チャンクが大きすぎた
- 無駄な処理が多かった
解決:
- ベクター検索に変更→2秒に短縮!
- よく使う回答はキャッシュ
- 検索範囲を絞る(日付やカテゴリで)
失敗3:「古い情報と新しい情報が混在」
「休暇は何日?」→「10日です(いや、20日です)」
どっちやねん!
**原因:**古い規定と新しい規定が両方入ってた
解決:
- バージョン管理を徹底
- 最新版には「LATEST」タグを付与
- 古い情報は「アーカイブ」フォルダへ
まとめ:「知識の宝庫」が開いた日
導入から3ヶ月。今では社内になくてはならない存在になりました。
数字で見る成果:
- 問い合わせ対応時間:-80%
- ドキュメント探し時間:-90%
- 新人の立ち上がり:2倍速
- 社員満足度:85%→ 95%
でも、一番嬉しかったのは...
「前は誰に聞けばいいか分からなかったけど、今はAIがいるから安心」
こんな声をもらえたことです。
Dify×RAGの本当の価値:
- ノーコードでAIが作れる
- 社内の知識が活きる
- みんなが平等に情報にアクセスできる
- 新しい働き方が生まれる
これから始める方へ:
難しそうに見えるかもしれませんが、実はとても簡単です。
- まずは小さく始める(FAQ 10個からでOK)
- 効果を測定する
- 成功体験を共有する
- 徐々に拡大する
最後に:
「社内の情報が多すぎて管理できない」 「新人教育に時間がかかりすぎる」 「同じ質問に何度も答えるのが辛い」
こんな悩みを抱えているなら、Dify×RAGは必ず役に立ちます。
「知識の宝庫」は、もうそこにあります。 あとは、それを開く鍵(Dify)を使うだけです。
エンハンスド株式会社では、Difyを活用したRAGシステムの導入から運用まで、実体験に基づいたサポートを提供しています。「うちでもできるかな?」という疑問から、お気軽にご相談ください。一緒に、社内の「知識の宝庫」を開きましょう!
参考リンク
執筆者: エンハンスド株式会社 AIソリューションチーム
公開日: 2025年5月23日
カテゴリ: AI活用, ナレッジ管理
タグ: #Dify #RAG #社内AI #ナレッジベース #DX