DifyでRAGを実装する実践ガイド

20分で読めます
エンハンスド技術チーム
DifyRAGLLMAIオープンソース
オープンソースLLMアプリ開発プラットフォームDifyを使ったRAG実装の詳細を解説します。

Difyで作る最強の社内AI:「知識の宝庫」を解き放つRAGシステム構築記

はじめに:「社内情報が多すぎて探せない」地獄からの脱出

「あの資料どこだっけ...」 「このプロジェクトの経緯、誰か知ってる?」 「新人に説明するの、また一から...?」

社内Slackで毎日飛び交うこんな質問。私たちのチームも同じ悩みを抱えていました。

ドキュメントは山ほどあるのに、必要な情報にたどり着けない。まるで宝の山に埋もれて、宝物が見つからない状態でした。

そんな時に出会ったのがDifyとRAG(Retrieval-Augmented Generation)。これが私たちの働き方を劇的に変えてくれました。今では「AIさん、〇〇について教えて」と聞くだけで、社内の膨大な知識から最適な答えが返ってきます。

今回は、この「魔法のような」システムをどうやって作ったか、失敗も含めて正直にお話しします。

RAGって何?「ChatGPTに社内情報を教える」魔法

分かりやすく言うと...

想像してください。新入社員(ChatGPT)がいて、すごく頭は良いけど、あなたの会社のことは何も知らない。

そこで、社内の資料室(ナレッジベース)を用意して、質問されたら関連資料を渡してから答えてもらう。これがRAGです!

通常のChatGPT: 「御社の製品仕様を教えて」→「一般的な製品仕様は...」(的外れ)

RAG搭載ChatGPT: 「御社の製品仕様を教えて」→(社内資料を確認)→「弊社のProduct Aは...」(完璧!)

導入してわかった本当のメリット

  1. 新人教育が激変

    • Before:先輩が3日かけて説明
    • After:AIに聞けば5分で理解
  2. ドキュメント探しがゼロに

    • Before:「あの資料どこ...」30分探す
    • After:「〇〇について教えて」即回答
  3. 情報の一貫性

    • みんなが同じ情報源から回答
    • 「人によって言うことが違う」問題を解決
  4. コスパ最強

    • ChatGPTを1から教育?→数億円
    • RAGで既存資料を活用→ほぼ無料

Difyとの出会い:「これ、プログラミングできない人でも使える!」

最初の衝撃

正直に言います。最初は「また新しいツールか...」と思ってました。

でも、デモを見て衝撃を受けました。ドラッグ&ドロップでAIアプリが作れる。まるでレゴブロックを組み立てるような感覚!

Difyのすごいところ:

  • ノーコードでAI構築:エンジニアじゃなくても作れる
  • 見た目で分かる:フローチャートみたいに処理が見える
  • すぐ試せる:作ったらその場でテスト可能
  • 何でも繋がる:ChatGPT、Claude、社内システム...全部OK

他のツールと比べてみた結果

最初はLangChainでゴリゴリ実装してました。3週間かけて作ったものが、Difyなら3時間で完成...正直、悔しかったです(笑)

開発スピードの違い:

  • LangChain:コード500行、開発3週間
  • Dify:ビジュアル設定のみ、開発3時間

結果は同じ。いや、Difyの方が管理しやすい!

環境構築:意外と簡単だった30分セットアップ

「インフラ苦手...」な私でもできた!

環境構築と聞いて逃げたくなる気持ち、分かります。私もそうでした。 でも、Difyは本当に簡単。コーヒー飲みながら30分で完了しました。

必要なもの:

  • Dockerが動くPC(Mac、Windows、LinuxどれでもOK)
  • 30分の時間
  • コーヒー(重要!)

実際の手順(つまずきポイント付き)

# 1. まずはクローン(これは誰でもできる)
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify

# 2. 設定ファイルをコピー
cp .env.example .env

# 3. 秘密の設定を編集(ここ重要!)
nano .env  # Macならvimでも可

つまずきポイント1:.envの設定

# これだけは必ず変更!
SECRET_KEY=your-super-secret-key-12345  # 適当な長い文字列に
INIT_PASSWORD=Admin123!  # 管理者パスワード(忘れないで!)

最初、デフォルトのままにしてたらセキュリティ警告が...ちゃんと変更しましょう。

# 4. いよいよ起動!
docker-compose up -d

# 5. 起動確認(ドキドキの瞬間)
docker ps

つまずきポイント2:ポートが使用中

「あれ?エラーが出る...」

他のサービスが80番ポートを使ってることがあります。 .envでポート変更すればOK:

DIFY_PORT=3000  # 好きなポート番号に

初回ログイン:感動の瞬間

ブラウザで http://localhost を開いて...

「おお、動いた!」

管理画面が日本語で表示された時の感動は忘れられません。

ナレッジベース構築:社内の「知識の宝庫」を作る

まず何から始めたか

「さあ、AIに学習させるぞ!」と意気込んだものの...

社内資料を見渡すと:

  • Word文書が500個
  • PDF資料が300個
  • Confluenceページが200個
  • マニュアルのExcelが50個(なぜExcel...)

「これ、全部手作業で登録するの...?」

絶望しかけましたが、大丈夫でした。

データ準備の現実的なアプローチ

ステップ1:まずは重要な資料から

全部一気には無理。だから優先順位をつけました:

  1. よく聞かれる質問のFAQ(これだけで効果大)
  2. 製品マニュアル(問い合わせ削減)
  3. 社内規定(みんなが確認したがる)
  4. プロジェクト議事録(後から追加)

ステップ2:フォーマット統一は諦めた

最初は「全部Markdownに統一しよう!」と頑張ってましたが... 3日で挫折。DifyはPDFもWordもそのまま食べてくれることに気づき、方針転換。

# 実際に使った簡易スクリプト
import os
from pathlib import Path

# とりあえず全ファイルをリストアップ
docs_path = Path("./社内資料")
file_list = []

for file in docs_path.rglob("*"):
    if file.suffix in [".pdf", ".docx", ".md", ".txt"]:
        file_list.append({
            "path": str(file),
            "type": file.suffix,
            "size": file.stat().st_size / 1024 / 1024  # MB
        })

print(f"見つかったファイル: {len(file_list)}個")
print(f"合計サイズ: {sum(f['size'] for f in file_list):.1f}MB")

つまずきポイント:巨大PDFに注意!

200MBのPDF(画像だらけの資料)をアップロードしたら、処理が終わらない... 結局、50MB以上のファイルは分割することにしました。

Difyでのアップロード:ドラッグ&ドロップの衝撃

コードを書いてベクター化して...と思ってたら、Difyの管理画面に「ナレッジベース」というボタンが。

「えっ、ファイルをドラッグ&ドロップするだけ?」

本当にそれだけでした。

Difyのナレッジベース機能:

  1. ファイルをドラッグ&ドロップ
  2. 自動でチャンク分割
  3. 自動でベクター化
  4. 完了!

「3日かかると思ってた作業が30分で終わった...」

設定でつまずいたポイント:

  • チャンクサイズ:デフォルトの800文字がちょうどよかった
  • 重複部分:20%くらいがベスト(試行錯誤の結果)
  • メタデータ:ファイル名を自動で付けてくれるのが便利

Difyワークフロー構築:「レゴブロック」でAIを組み立てる

管理画面を開いて衝撃を受けた

ログインしたら、目の前にビジュアルエディタが。

「これ、プログラミングじゃないよね?」

ブロックをドラッグして、線で繋いで、設定を入力するだけ。まるでScratchでプログラミングしてるみたい!

実際に作ったワークフロー

ステップ1:新規アプリ作成

  1. 「新規アプリ」ボタンをクリック
  2. 名前:「社内AIアシスタント」
  3. タイプ:「チャットボット」を選択
  4. アイコン:🤖(こういうところが楽しい)

ステップ2:ブロックを配置

左側のパレットからブロックをドラッグ:

  1. 「開始」ブロック(ユーザー入力を受け取る)
  2. 「ナレッジ検索」ブロック(これがキモ!)
  3. 「LLM」ブロック(回答生成)
  4. 「終了」ブロック(結果を返す)

つまずきポイント:ブロックの接続

最初、線で繋ぐのに慣れなくて...

  • 出力ポートから入力ポートへドラッグ
  • 間違えたら線を右クリックで削除
  • 何度でもやり直せるから安心

プロンプト設定:「AIの性格」を決める

プロンプトは超重要!ここでAIの「性格」が決まります。

最初の失敗:

「質問に答えてください」

これだけだと、適当な答えが返ってきました...

改善後のプロンプト:

あなたは[会社名]のベテラン社員です。
新入社員や同僚からの質問に、以下のルールで答えてください:

1. 提供された資料の情報のみ使用(勝手に作らない)
2. 分からないことは「資料に記載がありません」と正直に
3. 専門用語はかみ砕いて説明
4. 「です・ます」調で丁寧に
5. 参照した資料名を必ず明記

これで「優しい先輩」のAIが完成!

つまずきポイント:文字数制限

「簡潔に答えて」と書いたら、簡潔すぎて情報不足に... 「200文字以内でまとめ、その後詳細を説明」のように具体的に指示するとうまくいきました。

実際に使ってみた結果:「すごい」の一言

初日の衝撃

「先月のプロジェクトXの仕様ってどうなってたっけ?」

以前なら:

  • Slackでプロジェクトチャンネルを探す(10分)
  • 過去ログをさかのぼる(20分)
  • 担当者に確認(返事待ち1時間)

今:

  • AIに聞く(1分)
  • 完璧な回答が返ってくる

実際の回答例:

プロジェクトXの仕様についてお答えします。

📍 概要:
ECサイトのリニューアルプロジェクト

📅 スケジュール:
- 開始:2024年3月
- リリース予定:2024年6月

📋 主要機能:
1. レスポンシブデザイン対応
2. 決済システムの刷新
3. 在庫管理APIの統合

📄 参照資料:
- プロジェクトX_要件定義書_v2.3.pdf
- 2024年3月定例会議事録.docx

ちゃんと参照元まで教えてくれる!

予想外の効果:チームの変化

1. 情報共有が活発に 「誰かに聞く」ハードルが下がって、知識のドキュメント化が進みました。

2. 新人が即戦力に 入社1週間の新人が、ベテランと同じ情報にアクセスできる!

3. 「知らない」を言いやすくなった 「AIで調べたらこうでした」と言えるように。

運用してみて分かったこと

「作って終わり」じゃダメだった

リリースして喜々...と思ってた2週間後。

「あれ?AIの回答が変だぞ?」

原因を調べると:

  • 古い資料が混ざってた
  • 矛盾する情報があった
  • 更新された資料が反映されてない

そう、メンテナンスが必要だったんです。

定期メンテナンスのルーティン

毎週金曜日の午後:

  1. 今週追加された資料を確認
  2. 古い資料をアーカイブ
  3. ユーザーフィードバックを確認
  4. プロンプトの微調整

これをルーティン化したら、精度が格段に向上!

ユーザーフィードバックが宝の山

実際にもらったフィードバック:

  • 「回答が長すぎる」→ 要約を先に表示
  • 「専門用語が多い」→ 用語集を作成
  • 「関係ない情報が出る」→ 検索精度を調整

これらの声を反映したら、満足度が70%から95%に!

コストも考えなきゃ...

月間コスト(概算):

  • Difyホスティング:約1万円
  • ChatGPT API:約2万円(使用量次第)
  • メンテナンス工数:週約2時間

効果:

  • 問い合わせ対応時間:-80%
  • ドキュメント探し時間:-90%
  • 新人教育時間:-60%

ROIで考えると、余裕でペイしてます!

セキュリティ:「社内情報が漏れたら...」の恐怖

最初は甘く見てた

「社内のシステムだから安全でしょ」

...と思ってたら、セキュリティチームから指摘が。

「もしこのAIが外部からアクセスされたら?」 「誰が何を聞いたか記録してる?」 「機密情報が含まれてない?」

そういえば何も考えてなかった...

実装したセキュリティ対策

1. アクセス制限

  • 社内ネットワークからのみアクセス可
  • Azure ADで認証(シングルサインオン)
  • 部署ごとにアクセスできる資料を制限

2. 監査ログ

  • 誰がいつ何を質問したか全て記録
  • 怒られちゃうかな...と思ったけど、意外と好評
  • 「誰がよく使ってるか分かって良い」とのこと

3. データのフィルタリング

  • 個人情報を含む資料は除外
  • 機密度「高」の資料は管理者のみ
  • 契約書などはマスキング処理

つまずきポイント: 最初、セキュリティを厳しくしすぎて使いにくいシステムに... バランスが大事ですね。

トラブルシューティング:「やらかした」集

失敗1:「全然関係ない答えが返ってくる」

「社員旅行はいつ?」→「弊社の旅行代理店サービスは...」

ちがう、そうじゃない!

原因:「旅行」というキーワードだけで検索してた

解決:

  • 検索キーワードを増やす(類義語辞書を作成)
  • コンテキストを考慮した検索に変更
  • よくある質問はFAQとして別管理

失敗2:「遅すぎて使えない」

最初の頃、返答まで10秒以上...

「これなら自分で探した方が早い」と言われちゃいました。

原因:

  • 全文検索してた(ベクター検索未使用)
  • チャンクが大きすぎた
  • 無駄な処理が多かった

解決:

  • ベクター検索に変更→2秒に短縮!
  • よく使う回答はキャッシュ
  • 検索範囲を絞る(日付やカテゴリで)

失敗3:「古い情報と新しい情報が混在」

「休暇は何日?」→「10日です(いや、20日です)」

どっちやねん!

**原因:**古い規定と新しい規定が両方入ってた

解決:

  • バージョン管理を徹底
  • 最新版には「LATEST」タグを付与
  • 古い情報は「アーカイブ」フォルダへ

まとめ:「知識の宝庫」が開いた日

導入から3ヶ月。今では社内になくてはならない存在になりました。

数字で見る成果:

  • 問い合わせ対応時間:-80%
  • ドキュメント探し時間:-90%
  • 新人の立ち上がり:2倍速
  • 社員満足度:85%→ 95%

でも、一番嬉しかったのは...

「前は誰に聞けばいいか分からなかったけど、今はAIがいるから安心」

こんな声をもらえたことです。

Dify×RAGの本当の価値:

  • ノーコードでAIが作れる
  • 社内の知識が活きる
  • みんなが平等に情報にアクセスできる
  • 新しい働き方が生まれる

これから始める方へ:

難しそうに見えるかもしれませんが、実はとても簡単です。

  1. まずは小さく始める(FAQ 10個からでOK)
  2. 効果を測定する
  3. 成功体験を共有する
  4. 徐々に拡大する

最後に:

「社内の情報が多すぎて管理できない」 「新人教育に時間がかかりすぎる」 「同じ質問に何度も答えるのが辛い」

こんな悩みを抱えているなら、Dify×RAGは必ず役に立ちます。

「知識の宝庫」は、もうそこにあります。 あとは、それを開く鍵(Dify)を使うだけです。

エンハンスド株式会社では、Difyを活用したRAGシステムの導入から運用まで、実体験に基づいたサポートを提供しています。「うちでもできるかな?」という疑問から、お気軽にご相談ください。一緒に、社内の「知識の宝庫」を開きましょう!

参考リンク


執筆者: エンハンスド株式会社 AIソリューションチーム
公開日: 2025年5月23日
カテゴリ: AI活用, ナレッジ管理
タグ: #Dify #RAG #社内AI #ナレッジベース #DX

技術的な課題をお持ちですか?

記事でご紹介した技術や実装について、
より詳細なご相談やプロジェクトのサポートを承ります

無料技術相談を申し込む