AIで「猫に餌をあげるだけのサイト」を作ったら、世界中の猫好きが集まった話

「ボタンを押すと、地球の裏側にいる本物の猫にエサがあげられるサイト」
そう聞いて、何のことか想像つきますか?
最近 X(旧 Twitter)で話題になっている feed-the.cat というサイトの話です。開発者によれば、失業中に制作を始めたというサイトが、いま X を中心に猫好きコミュニティで話題になっています。
最初に見たとき、「いや、それ何が面白いの?」と正直思いました。でも触ってみると、これは間違いなく次の時代の Web サービスの形だな、と感じる事例でした。
feed-the.cat とは何か
サイトの仕組みは、拍子抜けするほどシンプルです。
ウェブサイトを開く
ライブカメラ越しに、どこかの猫が映っている
ボタンを押す
遠隔の自動給餌器がカチッと動き、本物のエサが出る
猫がやってきて、もぐもぐ食べる
それを世界中の誰かが画面越しに眺める
ただ、それだけです。

ですが、ここに細かい工夫が乗っています。
過食を防ぐための クールダウン機能(連打しても出ない)
全世界の人と話せる テキストチャット
一緒に流れる 音楽ラジオ
給餌した人がカウントされる ランキングシステム
猫を目撃したシーンを残せる ギャラリー
つまり、「猫を養うミニ SNS」になっているわけです。
きっかけは「失業」と「中国のあのアプリ」
開発者によれば、スタート地点はすごく地に足のついた話だったようです。
ざっくりまとめると、こんな流れです。
開発者によれば、失業中に制作を始めたという
中国でバズっていた 野良猫にエサをあげられるアプリ「Hello Street Cat」 に着想を得ていた
「カメラ+給餌器を Web で繋げばいいじゃん」と思いついた
自分用に作っていたら、「これ、人にも開放したら面白くないか?」となった
公開したら、知らない人たちが世界中からエサをあげにきた

ここまでなら、「個人開発者がいい感じのアイデアを形にした話」で終わりです。
ところが、本当にざわついたのはここから先でした。
AI を活用した個人開発事例としても注目された
このサイトが X 上で広がった要因のひとつが、AI を活用した個人開発事例としても注目されたことです。X 上では「彼はバイブコーディングで作った」という紹介が話題になりました。
「バイブコーディング(vibe coding)」とは、ざっくり言えば 「AI とノリで会話しながらコードを書いていくスタイル」 のことです。要件定義書やしっかりした設計書を先に書くのではなく、「こんな雰囲気で動くやつ作って」「あ、もうちょっと色変えて」と AI に指示を出しながら、勢いで完成まで持っていくやり方ですね。

つまり今回のサイトは、
ひとりのエンジニアが
AI と相談しながら
「猫にエサあげるだけのサイト」を立ち上げて
X を中心に猫好きコミュニティで話題化するところまで持っていった
という構造です。
「AI が代わりにコードを書く」というよりも、「AI が後ろにいてくれるから、ひとりでも個人開発としてはかなり注目を集めるサービスを生めるようになった」という方が、今回のニュアンスとしては近いです。
このサイトの何が面白いか、3 つに整理してみる
ここで、ちょっと冷静に「何がそんなにすごいんだっけ?」を整理してみます。
1. 「ボタンひとつで現実を動かす」体験
ふつうのウェブサイトでボタンを押すと、画面の中の数字が変わったり、画面が遷移したりするだけです。
feed-the.cat の場合は、ボタンを押すと、地球の反対側でモノが動きます。
カチッ、シャラシャラ、と給餌器が回って、本物の猫がやってくる。これがブラウザの中だけで完結しないインタラクションになっていて、しかも全世界の人たちが「自分のボタン」が現実を動かしている感覚を共有できるわけです。
「画面の向こう側に、本当に動くものがある」という体験は、思った以上にクセになります。
2. 「他人の家の猫を、世界中で愛でる」コミュニティ
このサイトの本質は、たぶん「給餌」じゃなくて 「共同で見守る感覚」 の方です。
自分はいま、東京から眺めている
隣のチャット欄には、ブラジル人とドイツ人がいる
みんなで同じ猫が食べているところを見ている
冷静に考えると、何の生産性もありません。でも、これって YouTube のライブ配信に近い、新しい形の「ゆるい SNS」になっています。
3. シェルターと寄付の流れも組み込まれている
サイトには寄付の仕組みも組み込まれていて、その資金は インフラ費用と、提携している猫シェルターへの支援 に回るとされています。
「楽しい」と「ちょっといいことをしている」がセットになっているのがうまくて、ただのバズで終わらせず、社会的な意味を持たせている設計になっています。
ここから先に見える「将来こうなるかもね」の話
ここからは少し未来寄りの話です。
feed-the.cat みたいなサイトが当たり前になった世界では、こんなことができるようになりそう、という例を挙げてみます。

「保護犬版 feed-the.dog」
同じ仕組みで、保護犬と離れて暮らす人を繋ぐサービスは作れます。世界中の人が、自分の好きな犬に向けて、ちょっとしたごほうびオヤツを贈れる、みたいな世界線です。
「離島の畑の水やりサイト」
カメラ付きの灌水システムを置いて、「ボタンを押すと離島の畑に水が撒かれる」という体験を販売するモデルです。応援の気持ちが「ふるさと納税」ではなく、「リアルタイムの操作」に変わります。
「介護施設の植物に水をあげる」プロジェクト
ご家族や子どもたちが、外からボタンを押して、入居している家族の部屋の植物に水をあげる。ライブカメラ越しに、「あ、葉っぱ揺れた」が見えるだけで、想像以上に「会いに行った」に近い体感になりそうです。
「ひとり暮らしの親を見守る」サイト
これはもう少しデリケートな話になりますが、合意の上で同じような仕組みを家族向けに使うことで、「ボタンを押すと、実家のキッチンの照明がふわっと光る」みたいな緩い見守りも作れます。
「電話するほどじゃないけど、生きてるか気にしている」というニーズに、ちょうどいい温度感です。
どれも昔は、企業がそれなりのチームを組まないと作れないものでした。
でも、これらが エンジニアひとりが、AIを活用しながら開発されたとされる ところまで来ているのが、いまの時点での feed-the.cat の本当の意味だと思います。
ビジネス目線で見ても、ヒントが多い
エンジニアじゃない人にも、このサイトはヒントの宝庫です。
ざっくりまとめると、こんなふうに置き換えられます。
「ライブカメラ × ボタン × 寄付」のテンプレは、いろんな業界に応用できそう
自社の現場(工場・店舗・農地・施設)をライブで開放することで、「ファンが直接応援できる」場が作れる
そこに AI を使った個人開発レベルの軽さ が組み合わさると、最初に必要な投資がとても小さくなる
「うちの業界、なんか地味で発信しにくいんだよなあ」と感じている会社ほど、自社の現場をいちばん面白く見せられる可能性があります。なにせ feed-the.cat ですら、コンテンツは「猫が食べている姿」だけです。
それでも、世界中の人が見にきて、チャットが流れて、寄付が集まっています。
まとめ
feed-the.cat は、AI と一緒に作られた「ボタンを押すと本物の猫にエサがあげられる」サイト(開発者によれば、失業中に制作を始めたという)
中国の「Hello Street Cat」に着想を得たことがきっかけだった
AI を活用した個人開発事例としても注目され、X を中心に猫好きコミュニティで話題化していった
「画面のボタンが現実を動かす」「他人の猫を世界中で見守る」「寄付がついてくる」の 3 点がセットになっていて、単なるネタサイトに見えない
同じ仕組みは、保護犬、離島の畑、介護施設、見守りなど、いろんな分野に横展開できる余地がある
「ひとりのエンジニア+ AI」で、個人開発からでもかなり注目を集めるサービスを生み出せる時代に、確実に入ってきている
「AI を使うと、こういうものが作れるらしいよ」という抽象的な話より、こうやって動いているサイトを見るのがいちばん早いです。
一度、feed-the.cat を開いて、世界のどこかの猫にエサをあげてみてください。たぶん、想像していたより少し未来の手触りが、画面越しに伝わってきます。
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